日経ビジネスが実施した転勤に関するアンケート。1033件の回答から得た“都市伝説”の証言には、転勤経験者の感情が交錯する人生ドラマがあふれている。

■掲載予定 ※内容は予告なく変更する場合があります
(1)1000人調査 社員は「転勤命令」をどう受け止める 懸念は家族
(2)70社の人事に聞く「わが社が転勤制度を見直す理由」
(3)世界32万人のグループ社員の転勤をなくしたい 巨大艦隊NTTの挑戦
(4)転勤が宿命の製造業、クボタが紙の辞令を廃止した理由
(5)働く場所は私が決める 富士通、明治安田が選んだ卒転勤
(6)家賃補助9割、手当240万円…「転勤当たり前」保険会社の試行錯誤
(7)養老孟司氏 「転勤拒否は自分の未来を狭める行為」
(8)大手前大・平野学長「転勤は日本のすり合わせ文化の象徴だ」
(9)「ほとんどの転勤はなくせる トップダウンが重要」大久保幸夫氏
(10)転勤は中小にも余波、「配偶者の異動で辞職」を防げ 楓工務店
(11)人事部はつらいよ…「よかれと思う転勤が通用しない」
(12)転勤族もつらいよ…経験者たちの哀歓「転勤伝説」(今回)
(13)転勤免除期間、ジョブ型、キャリア自律…望まない転勤なくす処方箋

家を建てたら転勤命令

(イラスト=高田 真弓)
(イラスト=高田 真弓)

 一番多かったのが「家を建てたら転勤になった」というエピソード。住宅ローンを抱えながら新築を手放せず、仕方がなく単身赴任を選ぶ人も多い。また、住宅補助など転勤に関する手当は企業によって差があり、同じエリアに赴任している他社の手厚さを聞いてあぜんとすることも。持ち家の住宅ローンのことを考えて気が遠くなる日もある。

「住宅を購入してすぐ転勤。賃貸に出したがその手続きや補修対処に苦労した(64歳、情報通信)」「不在時の持ち家の管理に加えて住宅ローン減税がなくなり不満を漏らす人が多い(46歳、製造)」

転勤で忠誠心をはかる?

(イラスト=高田 真弓)
(イラスト=高田 真弓)

 転勤を断ると他部署への異動や最悪退職を促されるケースが報告された。転勤を会社への忠誠心をはかるリトマス試験紙にしている企業もあるようだ。

「営業技術担当時代、語学力や妻の仕事などを理由に米国駐在を断ったら、畑違いの企画部門に異動になった(59歳、製造)」「結婚1年目で夫に転勤命令。単身赴任は経済的に難しいと断ったところ事実上の解雇に(24歳、その他)」「転勤か退職か選ばされることが珍しくない(55歳、情報通信)」

新しい出会い、そして離婚?

(イラスト=高田 真弓)
(イラスト=高田 真弓)

 既婚者が転勤先で別の相手に乗り換えたり、相手が単身赴任で不在になり、1人家に残されている間に別の人と関係を築いたりする人が一定数いる様子。独身の場合は、転勤が出会いの機会になっているともいえる。

「転勤先で“現地妻”“現地夫”ができて離婚する人が結構いた。破局となって離婚・再婚する人もいれば、明るみに出ずに二重生活を続ける人も……(55歳、情報通信)」「友人は転勤があるたびに彼女が代わっていた(29歳、流通)」

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家計が潤う……はずでは?

(イラスト=高田 真弓)
(イラスト=高田 真弓)

 生活コストの低い地方への転居や手厚い転勤手当で家計が潤うという声がある一方で、単身赴任による二重生活や都心暮らしで赤字になるという話も寄せられた。海外の場合、為替変動で給与が下がる、子どもの教育費が高いなど苦労が多い。手当に過度な期待は禁物。

「住宅補助で家計が助かっている(32歳、製造)」「転勤手当で年収は上がったが、税金と生活費を考慮すると手取りは減った(43歳、金融)」「英国に赴任したが、手当分以上の金額が為替差損で消えた(42歳、情報通信)」

赴任の任期はまやかし

 任期2年のはずが、気がつけば5年以上になるなど、任期が長期化する証言も。転勤先に気に入られたと言われても、複雑な気持ちになってしまう。転勤するときは任期をしっかり確認を。

「転勤先になじむと手放してもらえなくなる。同僚は任期1年のはずが20年以上になった(60歳、製造)」「5年の約束が19年(62歳、製造)

人生の節目に辞令発動

 結婚・出産、新車購入など、マイホーム購入以外にも大きなお金が動くようなライフイベントは多々ある。そんなタイミングで転勤になったという証言は多い。

「結婚した途端に転勤になった(36歳、製造)」「ローンを組んで、新車を購入した直後に転勤。実家暮らし前提で買ったのに、寮暮らしになり、数年間極貧生活を送った(56歳、官公庁)」

単身赴任で羽を伸ばす

 単身赴任は1人の時間が増えるため、活動範囲を広げられる。コミュニティーに参加し、新しい趣味を始めるなど新天地の暮らしを楽しめる。

「東京に単身赴任し、観光地を自由気ままに散策。地方と違ってクルマ移動ではないため、お酒も楽しめる(57歳、製造)」「仕事をリセットして心機一転するにはちょうどいい(54歳、製造)」

子どもとの思い出が乏しい

(イラスト=高田 真弓)
(イラスト=高田 真弓)

 子どもの教育や配偶者のキャリア、新築の家などを考慮し、ホームタウンに家族を残して単身赴任──。子どもの成長を見守ることはおろか、親子関係が淡泊になってしまうことも。

「子どもの小学校入学と同時に10年間の単身赴任。母子家庭で育ったようだと言われた(62歳、情報通信)」「出産直後に単身赴任。1年後に家族を呼び寄せたが、子どもが懐かず大変だった(39歳、製造)」「育児期間に単身赴任を通算5回経験。不在が多かったため今でも子どもが懐かず、よかったと思うことがない(49歳、製造)」

【調査概要】

調査名:日経ビジネス・転勤に関するアンケート
調査時期:2022年2月18日~3月18日
調査対象者:一般外部モニター(調査協力:クロス・マーケティング)、日経BPのウェブメディア読者
調査方法:ウェブフォーム
回答者数:1033人

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