【米大統領選2024】 バイデン氏対トランプ氏、4年前の「続編」を米国民の大半は望まず

サラ・スミス北米編集長

Trump and Biden debatiing

画像提供, Getty Images

画像説明, 2024年米大統領選は、トランプ氏とバイデン氏の再対決となる可能性もある

物語の続編が、1作目ほど優れていることはほとんどない。作られるべきではなかった映画の続編を、誰もが思い浮かべるだろう。アメリカの有権者は次の米大統領選をめぐり、同じような不安を抱くかもしれない。今回の選挙には4年前と同じ人物が主役として登場し、2020年大統領選挙の「再演」となる可能性が高まっている。

アメリカのジョー・バイデン大統領(80)は25日、2024年の大統領選で民主党から再選を目指すと発表した。一方、野党・共和党の候補者指名争いでは、ドナルド・トランプ前大統領が依然として最有力候補と目されている。

以前にも見たことのある物語を、また見たくてたまらないという人は、ごくわずかなようだ。最近の世論調査では、バイデン大統領とトランプ前大統領の2人の再出馬を望むアメリカ人はわずか5%で、38%はどちらも出馬しないことを望んでいると回答した。

バイデン氏がホワイトハウスにとどまろうと決意した理由の1つは、トランプ氏に勝てるのは自分だけだと確信していることだ。本当にそうなのかはいずれ分かる。少なくとも、トランプ氏を打ち負かしたことがあるのは、バイデン氏だけだ。

現職大統領が登場する選挙は、過去4年間を評価する国民投票と受け止められることが多い。バイデン政権には4年間の結果として挙げられる政策上の成果が複数ある。次の大統領選のスローガンは、「この仕事を終わらせよう」というものになるだろう。

しかし、印象的だったのは、バイデン氏の正式な出馬表明が、この選挙を選択の機会として捉えようとしたことだ。穏健派か過激派か、有能さかクレイジーさかを選ぶというものだ。前回の大統領選で、バイデン氏の演説の中核となっていた「国家の魂をかけた闘い」は今回も変わらない。

バイデン氏のキャンペーン動画にトランプ氏は登場しない。しかし、バイデン氏が、「アメリカを再び偉大にしよう(MAGA)」という過激主義、そしてそれがアメリカの民主主義に脅威をもたらしていると警告するこの動画には、2020年大統領選の投票結果を認定するための上下両院合同会議が開かれていた議事堂を、トランプ氏の支持者たちが襲撃した際の様子が映し出されている。

動画説明, 【米大統領選2024】 バイデン米大統領、自由と民主主義のため再選目指すと

この2年間、私たちは2020年大統領選の結果が盗まれたというトランプ氏の虚偽の主張を聞いてきた。もしトランプ氏が2024年の選挙の共和党候補になれば、この主張を続けるだろう。しかし、選挙で不正行為があったとのうそを繰り返すことが勝利の方程式ではないことは、昨年の中間選挙で明らかだった。2020年の投票結果を否定していることで有名な、トランプ氏の支持を受ける候補者のほとんどは、かなり悪い結果に終わった。

対照的に民主党は、これらの選挙で予想をはるかに上回る結果を獲得。上院で多数党を維持することもできた。この結果が、バイデン氏が党内で大きな課題に直面することはないだろうという保証へとつながった。

民主党に有利な最大の争点は中絶をめぐる問題だ。米連邦最高裁は昨年6月、アメリカで長年、女性の人工妊娠中絶権は合憲だとしてきた1973年の「ロー対ウェイド」判決を覆す判断を示した。これについて有権者から大きな反発があった。世論調査では、アメリカ人の3分の2は一貫して、中絶ケアは合法で利用しやすいものであるべきだと回答した。

バイデン大統領は投票までの18カ月間、この問題に何度も直面するだろう。出馬表明動画の中で、バイデン氏は共和党の過激派が「女性が自分の医療について、どう決定できるか命令」していると非難した。動画には最高裁の前で中絶禁止に抗議するデモ隊の様子が映し出される。

共和党は、追いかけていた車にようやく追いついた犬のようにみえる。この数十年間は、あまり詳しく説明しなくても中絶反対の立場を表明できたが、いまでは、中絶禁止を支持する候補者は、その主張が選挙で不利になる可能性があることに気づきつつある。共和党が多数を占める州議会は中絶を制限する州法を推進しているが、党の戦略家たちは全国レベルでの影響を懸念している。

それでも、バイデン氏の立場は依然としてぜい弱だ。同氏のパフォーマンスを支持する国民は42%、不支持は52%と、支持率は歴史的な低さを維持している。

バイデン氏に対抗する共和党候補が誰になったとしても、現在80歳のバイデン氏をよわよわしい老人として描くことは間違いない(トランプ氏は4歳しか若くはないが)。全国規模の精力的なキャンペーンを展開し、現大統領は疲れ切っているように見せたいと考えているだろう。バイデン氏は今回は、新型コロナウイルスのパンデミック下での実施となった2020年大統領選のように、デラウェア州の自宅の地下室から選挙活動を行うことはできない。

出馬表明動画には、バイデン氏が活気にあふれ、エネルギッシュに見える場面が意図的に多数用いられている。走っている様子を捉えたものも含まれている。しかし、投票日までこれを維持できるわけではない。

共和党側はインフレや南部国境を越えて流入する記録的な数の移民について取り上げるだろう。この2つの問題は確実に、共和党支持層の激しい怒りをあおるからだ。

トランプ氏、そして共和党候補者指名争いの主なライバルであるフロリダ州のロン・デサンティス知事が、共和党支持層を奮い立たせるやり方で、バイデン氏は民主党支持層を刺激することはない。それでも民主党は、2024年大統領選の候補にバイデン氏を選ぶことが最善の策である可能性があることを概ね認めている。

バイデン陣営は、トランプ氏がホワイトハウスに戻ってくるかもしれないという可能性が、民主党や無党派層の投票率を押し上げる最も効果的な要因になると考えているようだ。結局のところ、前回はうまくいったのだから、物語の続編でも同じ結果になることを望むのだろう。